人世横丁での探検

最近の、つまり4月19日に人世横丁にみなさんと行った時のは、
以下のような日記です。

それで、可視化したグラフが一番最初の図。
ここにある写真を、番号の若いほうから出します。
このグラフを見て気づいたのは、「文字」の大事さ。たしかに、
人世横丁に全く文字がなかったら、これはただ誰かが住んでいる
家が並んでいるだけ。それは、風情のある村にはなっても、
僕らを受け入れてくれる店ではありえないわけですね。

吉田さんが僕にコメントした「フィット感」が、
「中に入れてくれる感じ」と
「入った後、外界と繋がりながらも忘れさせてくれる感じ」
に分解できるのではないかと思います。








slide-1 うらびれているなあ、こんなに、都会のツボといえるほど艶やかで、辛さと悲しみをしょって仕事人の心を癒している場所なのに。

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slide-2 あまりにも悲しいのは、この地区が、近々再開発ということで店を畳んでしまうということ。
この写真は朝の午前7時30分。ベニヤ板がわびしい。

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slide-3 朝からお祭りのように飾りがぶら下がる。小さな店は、学園祭のような可愛らしい屋台に、高級な焼酎が並ぶ。

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slide-4 もう、たまらんほど美しい。京都のような気どりも、パリのような人工っぽさも、ボストンのような歴史気どりもない。
ここは脱力の美、人間が最も自然の状態で普通に生み出した世界の美の頂点だと僕は思う。だから、朝になっても、
化粧を落としたような「やつれ感」が不思議なほど感じられない。

slide-4 今すぐにでも、ここで呑みたくなるような町だずら。

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slide-7 この、対称性。道の右に行くも左に行くも、どちらも幸せが保証されているような気がする。ちょっと高い店があっても、基本的にこの地区は安い。さて、あなたはどちらに行くだろうか。
ブッダが東西南北で迷ったという手塚マンガとは比べようもない迷いが、嬉しい。
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slide-8 うっかり逆光を含めて撮影してしまったというのに、そうでない写真と同じくらい美しい。この感じは何だろうか、ちょっとした逆境がむしろ美しさを引き立たせる「村」かな。

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slide-10 どこの誰さんが、こんな綺麗な場所の、宝のような木造の一軒家でできた居酒屋にベニヤ板をぶち込むのでしょうか。この地域に、何を建設したらこれ以上に美しい街ができるのか。
もっとも、それを防ぐ力など自分には無いのだが。

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slide-11 おばちゃんが掃除する姿。残念な再開発だが、別に力を落としている様子もなく、快活に路地を掃き清める。この空間への愛情は直前でも衰えないのか。

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slide-12 そとから見ると、別に目立たない人世横丁だ。横の建物のベニヤだけみると、もう全て終わってしまったような錯覚を受ける。

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slide-13 近くの路地。似ているが、ここは再開発の対象にならないのだろうか。「通り抜けできます」という文字が、風情に満ちている。

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slide-14 再開発しますよ、もう出て行きましたよ。という、乾いた感じのメッセージを残して、去ってしまった親爺がここにいたわけだ。

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slide-15 この看板の光とフォントに、僕はなんとも言えず凛としたプライドを感じる。
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slide-16 奥行き。その奥の方にまで繋がる、提灯の光。提灯は、当然だが奥の方ほど小さくなる。しかし、そこには手前とは別の光が。
だから、どんどん入り込みたくなる。手前の店の青白い光と、奥手の暖色系の光。それを見ながらも、なぜか手前の店の屋内に興味を感じ得うr。
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slide-17 それが、これ。ピンボケになってしまったが、青白い外壁の中に、火の色が盛る明るい暖かい店内。家とは本来、こういうものだろう。
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slide-18 これですわ、右手があのホルモン家。あえて、ホルモン屋と書かない気持ちだ。その上に、提灯が横丁の外の世界まで繋いでくれている。
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slide-20 どん、と、そのホルモン家だ。昭和20年頃からの写真を見ると、ここはこれまでいろいろな店が交替で入っていたようだが、ホルモンという文字がこんなに似合う建物と空間は無い。
そして、提灯がこのホルモンを挟んで両脇に宇宙空間を貫くかのような確信に満ちて続いている。しかも、その光のラインには酒と憩いの店が繋がる。
世界で最も美しい場所だ、だからここが極楽である。

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slide-22 slide-23 横丁のど真ん中に位置するホルモンの横に、落ち着いた洋風のバー。この店は僕の趣味とは直接合わないけれど、ホルモン家と互いに尊敬しあう空気が、この道に漂う。
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slide-24 横丁の、サンシャイン側の出口。おそらく、昔、巣鴨プリズンの方面からちょっと入ってきて飲んだ人たちはこの入口から入ったのではないか。
そこに、学園祭の屋台のような、実に可愛らしいバーがある。しかし、ここで売られる焼酎も洋酒も、入手困難なものが多いような感じ。
slide-25 まるで、美しさを狙って作られたようなこの店と、そして隣の店とこの店の並ぶ姿である。
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結局、「げんき」という店に入った。写真は、都内の大学生らしい。このような若者も飲める価格の店で、焼きそばなどを出しながら、
森伊蔵や村尾などの超高級酒、特に焼酎が置いてある。
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slide-27 そう、読書がしたくなるような、静かさを、雑居と喧噪の中に感じる。静と動の狭間にある、それがこの店だ。
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slide-28 小さなころ、昔のごちゃごちゃの木造の一軒家の友人の家で、応接間でもなんでも無い部屋に通されて駄菓子を食った、あの感じ。
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slide-29 窓くらい直せよ、と普通なら言う。だが、ここの店の場合は、この張り紙もまた外の景色と調和している。外の光は何だろうか、あの青い光は?提灯と絶妙なバランスで一体化した外の世界。
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slide-30 みなさん、楽しんでいるのかな。たぶん、ぼうっとしているのは、物凄く落ち着いているんではないだろうか。ちょっとだけ心配。
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slide-32 阿部さんが、「泡波」のボトルと。貴重な酒らしく、小さなグラスに一杯注いでくれたのは、50歳くらいだが艶やかなおばちゃん。
トロリとした「食感」の焼酎だった。
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slide-33 どうですか、この、浮世絵みたいな看板から、提灯の線で外の世界まで繋がる滑らかな道なりは。何か、人類全員の実家がここにあるという感じがする。

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slide-34 数日して、さきほどのホルモン家に入った。働き者の、こだわりの親爺がすがすがしい。
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slide-36 炭火で肉もホルモンも焼く。しかし、肉の味も素晴らしいが、このアングルからの絵がまた素晴らしい。